軍事 - Wikipedia

軍事

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

軍事(ぐんじ Military affairs)とは戦争軍隊軍人軍事力などに関する事柄の総称である。

目次

[編集] 概要

軍事とは民事 (Civil affers) の対概念であり外交経済などと並ぶ主要な行政機能の一つである。軍事政策は軍隊を維持管理して軍事力を準備する政策である。[1]これを研究対象とする学問軍事学がある。しかしながら軍事という言葉自体は多用な領域を包括する曖昧な単語である。

社会においては物理的な強制力である暴力 (Violence) または実力 (Force) が政治紛争や経済紛争を解決する手段として使用される場合がある。例えば戦争はその最たるものであり、勃発した場合には社会全体の生存、財産の安全、自由などの社会の基本的な要素が危険にさらされることとなる。国防とはこのような事態に対処するための国家的な行政機能である。具体的には志願または徴集から得られる人員、軍事における専門的な知識技術、武器や兵器などの装備などから構成され、作戦のために組織化された機能集団、軍隊を編制し、運用する。

[編集] 軍事作戦

軍事作戦とは軍隊が行動するための指揮などの業務を指すが、厳密には作戦行動の指揮統率に関することを意味する。ここでは戦争・戦闘に関すること一般を記述する。

[編集] 戦争

詳細は戦争戦争哲学をそれぞれ参照

戦争においては戦闘、破壊、混乱、戒厳、動員などさまざまな非日常的な現象が同時に発生する。その影響の範囲や複雑性はさまざまな社会現象の中でも特に分析が難しい主題の一つである。しかしカール・フォン・クラウゼヴィッツは決闘に戦争をなぞらえた上で、戦争とは「敵を強制してわれわれの意志を遂行させるために用いられる暴力行為である」と説明しようとした。確かに戦争はまず敵を自己の権力の下に支配しようとする軍事力の行使として位置づけることができる。そして戦争では暴力は極大化され、軍事的な合理性の下であらゆる事柄が徹底的に合理化され、軍事力を最大限に発揮できるようにされる。

ただし戦争は単に軍事において完結する現象ではない。戦争にはその行為を行わせしめるだけの目的が伴う。つまり戦争の発生には必ず外交的または経済的、心理的な情勢が起因しており、あらゆる戦争は政治的な目的を究極的には達成しようと指導される。戦争がどのような原因によって勃発するのかについては人間の本性に求める学説から国際秩序の形態に求める学説までさまざまであり、最も重要な論点の一つである。ただし攻撃性などの人間の本性を原因とする主張は少数派であり、多くは特定の国際関係または社会の状況によって発生させられる条件説を支持している。

また戦争の過程でもさまざまな社会的、経済的、心理的な現象が同時的に進行する。戦争が社会にもたらすさまざまな影響はとても要約できるものではないが、あらゆる分野で軍事化が進むということは言える。政治体制は緊急事態に対処するために首相の権限が強化され、経済体制は軍事作戦兵站を支えるための生産に統制される。盛んな心理作戦が自国民と敵国民に対して行われ、防諜のために情報は統制される。予備役が動員され、あらゆる交通手段が徴発の対象となる。国際社会では激しい諜報と謀略が行われ、関係諸国は戦争の勝敗に介入すべきかどうかの政治決断を迫られる。敵と味方で国際秩序が大きく二分され、同盟や中立といった外交政策が国家の存亡を左右する。

戦争の政治的、軍事的、外交的な過程も非常に興味深い。戦争は外交政策によって限定的な戦いになるのか、または全面的な戦いになるのかが異なってくる。敵国との外交交渉が戦争と並行すればより少ない破壊で政治目的を達成しうる可能性が出てくるからである。軍事的な観点から戦争を見た場合に、対テロ作戦や対反乱作戦など断続的な武力行使を伴う低強度紛争、限定戦争などの限定的な武力行使を伴う中強度紛争、総力戦と呼ばれる全面的な武力行使を伴う高強度紛争の三つの段階がしばしば述べられる。また具体的な戦争の形態も従来型の陸上・海上戦力だけでなく、航空戦力や宇宙兵器の登場よって戦争の形態が平面的なものから立体的なものへ時代とともに変化している。また核兵器ミサイルの技術発展は核戦争の危険と核抑止に基づいた冷戦をもたらした。さらに近年では内戦や国際テロリズムの危険性が指摘されるようになり、低強度紛争における戦争以外の軍事作戦平和維持活動なども行われるようになり、軍事力の多機能化が進んでいる。

[編集] 作戦

詳細は作戦を参照

作戦 (Operations) とは軍事目標を達成するために計画的に実行される戦闘行動である。より厳密に述べると、作戦は戦闘行動だけではなく戦闘力を発揮するために行われるあらゆる行動を指す概念であり、戦争における軍事作戦だけではなく、より小規模な紛争事態、また平時における諸活動までをも意味する。ここでは主に戦闘行動を伴う軍事作戦を想定している。

作戦を実施することは戦略的な目標を達成するために与えられた戦闘力を運用することである。この技術は作戦術と呼ばれ、戦略的な状況において作戦を的確に位置づけ、与えられた戦闘力を戦術的に最も効果的に運用しようとする。成功した作戦にはいくつかの原則が共通して見られる。すなわち目的、主導、節約、機動、統一、警戒、奇襲、簡明、物量の原則である。また指揮官、士気の原則などを加える軍もあって一様ではないが、戦史での勝利にはこのような原則が導き出される。

作戦は一定の計画性に基づいて実施される。作戦計画の立案にはいくつかの段階がある。その最も初期の段階が状況判断である。状況判断は任務判断、地形判断、敵情判断から成り、我の目的と我が置かれている軍事的な状況を総合的に認識することである。十分な情報活動を基礎とした状況認識は意思決定を的確に支援することができる。状況判断に基づいて最も適切な作戦方針が模索される。ここで提案される作戦方針の全てを状況判断と組み合わせて研究し、最も優秀な作戦を採用することとなる。作戦の方針が定まればその方針を実行するために各下級部隊に命令が下される。命令を与える際には背景を踏まえた上で任務を明示し、それを達成するための戦力等を譲渡する。さらにその戦力に過不足がないかどうかを確認するなどの調整を行う。

作戦の形態には大きく分けて二種類に分けられる。敵を積極的に求めてこれを撃滅しようとする攻勢作戦、そして敵を待ち受けてから撃退しようとする防勢作戦の二種である。攻勢と防勢は作戦方針を定める際に極めて重要な決心となる。攻勢を採用した場合には戦いの主導権を獲得することが容易であるものの消耗が激しく、攻撃が失敗した際には逆襲を受ける恐れがある。一方防勢を採用した倍には整合的に地形や配置を利用して戦いやすいものの、戦いの主導権を失ってしまう恐れが強い。どちらを採用するのかは敵味方の状態だけではなく、戦略的な状況、地形の状況、兵站の状態などを総合的に考慮した上で決断しなければならない。

[編集] 戦略

詳細は戦略を参照

戦略 (Strategy) の定義は容易には導き出せない。一般的には戦略は長期的、総合的な視点に基づいて目的を達成するために考案される行動計画である。戦略は元々は「将軍の術 (STERATEGOS)」を語源に持ち、フランスの軍事学者マイゼロアによって考案された軍事学の概念であったが、現在では政治や経営の分野など意思決定を行うために盛んに使用されている。戦略の概念は意思決定の思考に最終的な目標と、長期的な計画性、総合的な視野の必要などを認識させてくれる。

戦略の枠組みは戦争の形態が総力戦へと移行し、また冷戦によって戦時と平時の区分が曖昧になったことから急速に拡大していった。ナポレオンは従来の戦術の概念に対してより大局的に戦争全体を概観する大戦術の概念を使用していたが、これは実質的には現在の戦略の考え方に似通っていたようであった。プロイセンの軍事学者クラウゼヴィッツによって戦略の概念が整理されると、本格的に軍事研究の分野での概念として定着していった。ただしこの頃の戦略は陸上の武力戦や短期間の決戦戦争の歴史的な軍事状況に影響を受けていたために、核抑止や革命戦争とは適合しないとフランスの将軍ボーフレは批判し、戦争にはもはや戦時と平時の区分はなく、戦略は軍事だけではなく外交や経済、思想や心理などの領域に渡って遂行されていると論じた。こうして従来の軍事的な戦略は現在では包括的な全体戦略となり、戦略の概念はより幅広い内容を含むものに昇華した。冷戦期における核戦力や外交の戦略、経済産業の戦略の発展は戦略の応用領域を拡大させ、また経営学でも経営戦略論としての研究領域が確立された。戦略の理論的な研究は近代以後においてはリデル・ハート間接アプローチ戦略、毛沢東の革命理論、ドゥーエエアパワー理論、マハンのシーパワー理論など幅広い拡大を見せている。

アメリカは冷戦後において国際関係で大きな覇権を確保することに成功し、アメリカの国家戦略は全世界的な影響を及ぼしている。戦略の学術研究でもアメリカは先進的な地位にあり、アメリカの戦略を構築してきた。アメリカの最も基本的な戦略として述べられるのがアルフレッド・セイヤー・マハンの『海上権力史論』で論じられているシーパワーを重視した地政学的な戦略である。アメリカが孤立政策を廃して軍事力の建設と運用に大きな影響を及ぼした。また核兵器とミサイルが開発されると抑止戦略が構築され、大量報復戦略、柔軟反応戦略などの核戦略理論がアメリカの安全保障政策の基礎となった。またイギリスでも海洋支配と勢力均衡を重視する国家戦略が採用されていたが、第一次世界大戦後には日米の海軍力の台頭により英米同盟と国際機構を利用した現状維持政策に変更を余儀なくされた。中国では人民戦争の思想を基礎として戦争の勝敗を左右するのは兵器などの物的要素よりもむしろ人的要素であると考えられている。しかし近代兵器の有用性についても認識しており、抑止力を確保するために核兵器を保有してもいる。また逐次装備の近代化も行っており、人民解放軍の量的強化から質的強化に移行しつつある。

[編集] 戦術

詳細は戦術を参照

戦術 (Tactics) とは戦闘において戦闘力を効果的に運用するための科学・技術である。その作戦形態の違いから陸軍の戦術、海軍の海戦術、空軍の航空戦術に分類されうる。どれほど優れた戦略であっても、その実行には優れた戦術をも必要とする。戦術の優劣は状況によって戦力の優劣を覆すこともある。アメリカ独立戦争カウペンスの戦いはその良い例であり、劣勢な戦力を以って大陸軍のダニエル・モーガンは勝利した。

戦術学において戦闘力は戦闘を効率的に行うための部隊の能力として捉え、基礎となる物理的な戦闘力とそれを倍増しうる精神的な戦闘力とに分けて考える。前者は兵員や装備の数量など可視的な要素であり、後者は士気、錬度、団結などの不可視的な要素である。より具体的には戦闘力は警戒能力、打撃能力、防護能力、情報能力、兵站能力が集合したものであり、拘束、打撃、攪乱、制圧の機能を持つ。戦術的な戦闘行動は攻撃防御、そして後退に大別できる。

攻撃とは撃滅、撃破するために敵を積極的に求める戦闘行動である。攻撃には二方向以上から同時的に攻撃する包囲、敵戦力の一点に対して集中的に前進攻撃した後に分断する突撃などの方式がある。防御は敵を拒否、撃退するために敵を待ち受ける形態の戦闘行動である。構築した陣地で敵を阻止する陣地防御と、攻撃する敵に対して積極的に逆襲を加える機動防御の方式などがある。後退は敵と距離を持つために後進する戦闘行動であり、遅滞行動を伴う。戦術的な戦闘行動は任務、地形、敵情に基づいて最適なものが決心されなければならない。

[編集] 統率

詳細はリーダーシップを参照

統率は単一の個人が他者の自発的な協力や本心からの信頼を得る方法を以って人間を指導することが出来るようになる地位を得る技術である。指揮統制の能力に並んで指揮官に求められる技術・才能であり、戦場という極限状況における効率的な部隊行動に強く求められる。統率は広義には指揮統制統御を指し、狭義には統御である。軍事組織における統率は軍事的リーダーシップであり、人格、知能、行動から構成される。[2]

[編集] 後方支援

詳細は後方支援を参照

後方支援または兵站とは前線の後方において物資の補給・輸送などによって前線の作戦部隊を支援する業務の総称である。後方支援は複雑・膨大・惰弱という特性があり、その主要業務は後方連絡線を用いて行われる。この後方支援は軍事作戦の内容や部隊の戦闘力を左右する。また広報などの業務をも後方支援は含んでおり、作戦の全般的な実行を補助する機能がある。[3]

[編集] 軍事行政

軍事行政とは軍事に関係する作戦指揮(軍令)に直接関係しない行政全般を指すが、厳密には国防大臣が掌握する軍隊の事務一般を意味する。ここでは外交や経済なども含めて記述する。

[編集] 地理

詳細は地政学軍事地理学をそれぞれ参照

地理は軍事と古来より深い関係があると考えられてきた。これは人間のあらゆる行為が地理的な条件によって制約されるからである。戦略的な観点から世界の地理と政治勢力の関係を簡略化して観察する学問に地政学があり、国家が領有する領土と領海の価値やその地形の戦略的な重要性を研究する。

また戦術的な観点から国土の形状や地形の特徴が明らかにする研究も行われてきた。具体的な作戦行動においては地形の活用が勝敗を左右しうるため、部隊の前進や配置、陣地や要塞の築城、後方連絡線の確保などあらゆる観点から分析がなされる。

[編集] 軍隊

軍隊は一定の規律・組織に基づいて編制された武装組織であり、軍事力の主体である。軍隊は直接侵略間接侵略防衛などの軍事行動を実行する能力を有し、概ね単一の最高指揮官の下で陸軍海軍空軍などが編制されている。しかしながら現代の多くの先進国は統合作戦の必要性から陸海空軍部隊を統合部隊として運用している。軍隊においては序列を明確にするために階級が全ての軍人に与えられ、部隊もその規模と序列から中隊や師団などの単位に編制されている。高級指揮官には補佐する機関として参謀本部が設置され、作戦計画の立案などを行う。国によっては軍事組織の成り立ちは様々であり、準軍事組織や民間防衛組織が編制されている場合もある。[4]

[編集] 政軍関係

政治はあらゆる軍事行動の上位に位置して目標を規定する。この上下関係は軍事学者クラウゼヴィッツの「戦争は他の手段を以ってする政治の延長である」という命題でも述べられている。すなわち政治の指導に従って軍事力は侵略防衛のために運用され、国内的にも危機管理や治安維持の目的で使用される。歴史的には国家総力戦という戦争の形態によって一時的に政治と軍事の関係が逆転する事態もあった。そのために現代では軍事戦略の上位概念として国家戦略が策定されて、さらに文民統制という文民政治家優位の政軍関係によって政治的決定の優位性が確立されている。従って戦争を開始・終了するのは政治であり、戦争を遂行するのは軍事の範囲となっている。[5]

[編集] 外交政策

外交は国家間の政治的な活動を総称し、歴史的にも軍事と深い関係性がある。軍事力は強制・抵抗及び抑止の機能を以って軍事的に利益を獲得・保持する。外交は外交交渉を通じてこれらの軍事的な成果を増大・確保・譲歩することによって政治的な目的を達成する手段である。また多国間で生じた対立においては、外交によってより多くの勢力を味方につけることは戦争の遂行に大きく貢献することが出来る。20世紀に核兵器の出現し、米ソ冷戦を背景にして軍事行動が核戦争の危険性を伴うようになると、外交交渉と限定的な軍事力を組み合わせた限定戦争の考えが確立されるようになり、軍事的な緊張を外交で抑制しながらも軍事行動で政治目的を達成しようとする政策が確立されるようになった。[6]

[編集] 経済政策

経済と軍事の関係は資源・人材・財力の使用や割当などを巡ってトレードオフにあり、対立的である。国防に依拠して社会秩序は形成されており、その社会に基づいて経済活動が行われていると同時に、軍事力の建設は経済力の規模によって制限される。そのために軍事力と経済力の調整の上で軍事費を配分することが重要であると考えられている。[7]また目的と手段の関係においては軍事と経済は相補的な関係にあり、経済力は軍事目的として運用することが可能であり、また軍事力は経済目的として運用することが可能である。[8]

[編集] 軍事史

詳細は軍事史を参照

軍事史戦争戦闘などの歴史である。特に国際関係科学技術の歴史における軍事的な事象に注目したものを指すが、歴史上の作戦戦闘について研究された歴史も含む。軍事研究に歴史的な事例を提供し、安全保障政策、戦略・戦術などの軍事学の研究に役立てられている。[9]

[編集] 戦争史

戦争の歴史は人類の歴史と進展をともにしている。原始の頃の戦争は主に氏族間で行われたが石器などの簡単な道具を用いた散発的かつ小規模な対決に限定されていたと考えられている。しかし農業が始まると人口は拡大し、部族社会が成立した。富みの蓄積は都市の形成をもたらし、経済力と文化の中心として都市は都市国家と発展した。

古代文明が成立したのは紀元前3000年ごろといわれており、チグリス・ユーフラテス流域のメソポタミア文明、ナイル流域のエジプト文明、ガンジス流域のインダス文明、黄河流域の中華文明がある。青銅器鉄器などの金属器が使用される時代となり、の使用で騎兵が登場して機動的な戦力の運用が可能となる。強力な政治力に基づいて軍事制度が高度に組織化され、密集隊形の大部隊が激突する会戦がしばしば発生するようになるのもこの時代である。しかしこの時代の戦争は農業経済であったために断続的であり、また文化的な背景に基づいた戦争の規範も形成された。

14世紀になって黒色火薬が発明され、それに伴って火器が開発されると急速に戦場の様相は変わっていった。これは軍事革命とも言われ、戦力にとって重要なのは打撃力だけでなく火力の要素が出現した。また大航海時代が到来すると海洋の経済的な利権を巡る軍事的な緊張が高まり、海軍力の装備や戦術が発展する。特に産業革命以降は工業産業に基づいて国家の財力や生産力が増大し、戦争が長期的に行われるようになる。

それまで傭兵など一部の社会集団により構成されていた軍事組織であったが、国家体制を改変する革命が起こり、フランス革命で国民軍が発足し、徴兵制などの動員体制が考案された。戦争は国家の総力をあげて行われ、より合理的、計画的、長期的に行われるようになっていった。こうして総力戦の形態が成立した。そして第一次世界大戦第二次世界大戦では機関銃戦車航空機、軍事通信などの新兵器が開発されておびただしい犠牲者を出すこととなった。

世界大戦の終結はアメリカとソヴィエトのイデオロギーを巡る対立をもたらし、また核兵器ミサイルの発明により核戦争の危険が発生した。米ソの対立は核抑止に基づいた冷戦として推移し、全面戦争に至らないよう限定的な規模でのいわゆる限定戦争が行われるようになる。しかし軍事技術の躍進は続き、空軍力や宇宙技術は軍拡競争を背景に大きな発展を見せ、人工衛星を打ち上げるようになる。軍事システムでは高度な情報技術が採用されるようになり、軍事における革命と呼ばれる。

冷戦後が終結すると内戦型の紛争など不正規戦が行われるようになり、従来型の重武装の機甲部隊だけでなく、特殊部隊と呼ばれる機動的かつ柔軟に運用することができるような戦力も登場した。戦争はより高度な軍事システムとして組織化された軍事力で迅速に行われるだけでなく、非正規戦部隊によっても行われるようにもなり、複雑化している。

[編集] 軍事思想史

軍事思想は軍事力をどのように運用するべきかという思考的な枠組みの基礎となってきた。現実主義的な視点から戦争は可能な限り回避して政略により敵を屈服させることを推奨した『孫子』は軍事思想史としての意義がある。孫子では欺瞞、奇襲、秘匿、急襲などの原則が述べられており、抽象的ではあるものの完成度の高い古典的な軍事研究であった。しかし西洋のほうでもギリシアではエパミノンダスやアレクサンドロスは歩兵部隊の装備や陣形を改良し、併せて騎兵部隊を歩兵部隊と連携して運用し、決定的な地点に投入され、その機動力と打撃力を発揮して勝利に大きく貢献した。彼らは軍事研究を残したわけではないが、この運用思想はローマのレギオン、ビザンチンのカタフラクトなどに継承されていく。またモンゴルは遊牧民族の特性を生かして騎兵だけの陸軍を運用し、高度な戦略的機動力でユーラシア大陸を席巻した。

しかし軍事革命により火薬が使用されるようになると軍事思想は大きな変化を迎えることとなる。火砲はその威力が向上するために一世紀以上もの時間がかかったが、スペイン方陣を経て歩兵、騎兵、砲兵が連携する三兵戦術が確立されると不可欠な戦力の要素として確立された。スウェーデン王のグスタフ・アドルフはさらにそれまでの軍制や戦術を改革し、軍隊には部隊編制や階級制度が導入された。そして基本教練の開発や横隊戦術の確立により、部隊の作戦運用は合理的に行われるようにされ、戦術に基づいた指揮統制を戦場にもたらした。船舶工学の発達から海軍力の重要性が向上し、海戦術海軍戦略の研究も始まる。この頃から小銃の性能は向上し、密集隊形の部隊が散開隊形の部隊によって大きな被害を受ける事態がアメリカ独立戦争で見られるようになる。フランス革命で誕生したフランス国民軍を指揮したナポレオンの機動的かつ合理的な戦力の集中運用、さらに敵の戦力の徹底的な撃滅は後の軍事思想に大きな影響を残した。

近代になりナポレオン戦争がクラウゼヴィッツやジョミニなどの軍事研究によって効果的な殲滅・決戦戦術として高く評価されたが、第一次世界大戦では軍事技術の発達によって旧来の戦力運用が通用しなくなり、両軍ともに長期にわたる塹壕戦を行うこととなった。また戦争の社会的な影響は拡大し、軍部が軍事的な合理性のみによって戦争指導を行うことや政治家が軍部を統制下におこうとする政治状況が見られるようになる。敵の商船を攻撃する通商破壊も行われるようになり、攻撃の対象は敵国の社会全体に拡大していった。しかし戦後には核兵器の登場によってそれまでの殲滅思想が核戦争をもたらす危険性から、抑止という考えが用いられるようになった。またそれまで軍事戦略だけをさしていた戦略の概念がより幅広い非軍事的な領域を含むようになる。その結果、懸念されていたアメリカとソヴィエトの軍事的な手段による直接的な衝突や核戦争は冷戦期に勃発することはなかった。

[編集] 軍事技術史

軍事技術は人類が民間技術を洗練させる過程で同時に発展し、軍事技術の優劣は戦略や戦術を革新し、時には文明の盛衰を左右した。狩猟用の弓矢や刀剣類は最も原始的でありながらも歴史においてかなり長い期間使用された武器であった。また冶金技術を軍事技術に応用したこと、また兵士の身体をそれらから防護するための甲冑や装甲を発明したこと、車輪や馬をチャリオットや騎兵として利用したことは近代化が始まるまでの戦争のあり方に大きな影響を与えた。

科学技術の躍進が中国においてついに火薬の技術に至ると、化学エネルギーを軍事に転用し始めた。こうして発明された火器が与えた歴史的な影響は軍事革命と呼ばれており、それまでの打撃戦闘を火力戦闘に転換させ、戦法は大きく変化した。また産業革命により生産力が向上すると軍事技術は国家や軍隊の支援の下で盛んに研究開発されるようになる。このような研究環境の変化はそれまで断続的であった軍事技術の発達と比べると短期間に飛躍的な進歩を見せるようになった。火器は機械工学の発展に影響を受けて自動化、大型化、機動化、多様化が進み、第一次世界大戦における機関銃火砲は戦争犠牲者を大幅に伸ばす一因となった。自動車船舶航空機などの交通手段の発達は戦車軍艦、軍用機などの新兵器を生み出し、生物化学兵器や核兵器など従来の兵器にはない大規模な殺傷能力を持つ兵器が登場した。

戦後の軍事技術も新たな宇宙技術や情報技術の影響を受けながら進化を続けている。従来から存在する銃器や装備はさらに洗練されて効率性、安全性、機動性、操作性の向上をもたらしている。ロケットには誘導装置が搭載されて弾道ミサイル巡航ミサイルに進歩し、また電子化、ネットワーク化された通信網に基づいてそれぞれの兵器はシステム化されている。軍事技術の重要性や有用性はますます国際関係においても高まり、ひとつの国力としても評価されている。

[編集] 軍事技術

詳細は軍事技術を参照

科学技術と軍事は武器兵器の製造・威力・運用に重大な関係がある。軍事力は技術力によってその質的な内容が規定されるものである。また戦車潜水艦航空機核兵器のように軍事力の運用方式そのものを変革した兵器も存在しており、戦争戦闘に多大な影響を与えることが出来る。従って科学技術の継続的な発展は軍事力の継続的な発展を基礎付けるものであると考えられている。[10]

軍事技術は武器または兵器の研究開発の基礎となる。これらは殺傷・破壊を目的とする装備類、乗物、施設等であり、陸上では歩兵が使用する刀剣小銃、また現代では火砲戦車がある。海上では船舶自体が一つの戦闘単位であり、現代では航空母艦駆逐艦がある。空中では航空機が戦闘単位であり、現代では戦闘機爆撃機がある。さらに近代になって電子兵器、ミサイルなどが研究開発され、さらに大量破壊兵器としては核兵器生物兵器化学兵器が開発された。(兵器一覧を参照)

[編集] 火器

一般に火器とは、火薬ガスのエネルギーを利用して弾丸を発射する武器・兵器である。軍事的には歩兵などが装備するような小銃、軽機関銃などの口径が小さいものを小火器、また歩兵が装備する迫撃砲、砲兵が装備する榴弾砲などの口径が大きいものを重火器と区分する。火器は用途、重量、機構、口径などによってさらに細分化されるが、この区分は国により異なっており、慣例的なものである。火砲と呼んだ場合は砲架に搭載された口径20ミリ以上のものを指し、大砲という名称は現在では軍事用語として用いられないが、火砲の一種であるカノン砲と榴弾砲の総称を指して用いられることもある。

[編集] 軍用車両

自動車の技術はさまざまな軍用車両をもたらした。主要な陸戦兵器として第一次世界大戦に最も発達した兵器は戦車であった。長期化した戦局を打開するためにイギリス陸軍のアーネスト・スウィントン大佐が発案した。戦車は軍用車両の中でも特に戦闘に特化している。車両としての機動力、主砲や機関銃などの火力、装甲の防護力が付与されており、戦場においては最前線で優れた路外機動力で運動し、敵の戦闘陣地や重火器などの固定目標を主砲で射撃する。装甲を備えているために敵の勢力下におかれた地域でも一定の生存性を発揮できる。戦車は攻撃力に主眼を置いているが、装甲車は輸送力や補助的な攻撃力を備えて設計されている。装甲車も第一次世界大戦に研究開発され、兵員の輸送、偵察、掩護などを行う。

[編集] 軍艦

船舶戦闘力を付加し始めたの時代は古代ギリシアにまで遡ることができるが、火砲の火力と装甲の防護力を備えた近代的な軍艦が成立したのは19世紀から20世紀にかけてのことである。現在、軍艦は航空母艦、水上艦艇、潜水艦に大別することができる。航空母艦は航空機を格納し、海上において航空機が離着陸するための滑走路を備え、この航空機を運用するための戦術機能を持つ艦艇である。航空機を展開することが可能であるために水上戦闘で航空優勢を得ることができる。水上艦艇はさらに巡洋艦駆逐艦フリゲートなどと分類され、火砲ミサイル魚雷発射管などで武装した艦艇である。本来の任務は航空母艦や商船などの護衛であるが、対地攻撃や海上警備などの作戦行動をとる場合もある。潜水艦は魚雷などで武装し、水中において航行する能力を持つ艦艇であり、動力機関によってディーゼル潜水艦や原子力潜水艦に区分される。潜水艦は水上艦艇の警戒網を避けて隠密裏に行動することができるため、通商破壊のために運用された。軍艦の種類はこれ以外にも掃海艇、強襲揚陸艦、事前集積船などさまざまである。

[編集] 軍用機

有人動力飛行機としての航空機が開発されたのは1903年のアメリカにおいてだったが、軍用化に貢献したのはフランスであった。1910年にフランスでは航空部隊が編制され、その後欧州諸国が航空部隊の創設に乗り出した。軍用機は戦闘機攻撃機爆撃機などに区分される。戦闘機とは敵の航空機を撃破することを目的とした航空機であり、優れた運動性を備えて機関銃や空対空ミサイルで武装し、攻撃機や爆撃機の護衛、また基地や都市の防空などを行う。攻撃機とは対地・対艦攻撃を主要な任務とし、戦闘機よりもミサイルや機関銃で重武装した航空機である。ただし冷戦後には戦闘機に対地・対艦攻撃能力が加わってきており、区別は難しくなっている。爆撃機は攻撃機と同じく対地・対艦攻撃能力を備えた航空機であり、主に戦略爆撃を行うものを指す。時代や地域によっては攻撃機との区分が難しい。爆撃機は攻撃機よりも爆弾やミサイルなどで重武装している。これら軍用機以外にも部隊を輸送する輸送機、航空偵察に特化した偵察機、レーダーを搭載して空中で警戒と航空管制を行う空中早期警戒機などがある。

[編集] ミサイル

ミサイルとは発射されると自律的に飛行して目標に衝突する投射体であり、誘導弾とも呼ばれる。第二次世界大戦の頃から研究開発が進み、現在では陸海空の分野にわたって幅広く使用されている。動力はロケットジェットエンジンであり、電子装置などによって飛行は制御され、弾道ミサイル巡航ミサイルなどがある。弾道ミサイルとは弾道に沿って飛行するミサイルであり、大気圏外を飛行する特徴がある。その射程から戦略兵器制限条約では5500キロ以上の射程を持つのが大陸間弾道ミサイル、1000キロから5500キロの射程を持つのが中距離弾道ミサイル、500キロから1000キロの射程を持つのが短距離弾道ミサイルと分類されている。巡航ミサイルはジェット・エンジンと無人操縦装置を備えたミサイルである。またこれ以外にも対地ミサイル、対艦ミサイル、対空ミサイルなどの種類もあり、ミサイルの機能や形態は多様化している。

[編集] 大量破壊兵器

大量破壊兵器とは通常の兵器に見られない高度な殺傷・破壊能力を備えた特殊な兵器である核兵器生物兵器化学兵器の総称である。化学兵器は化学物質を用いた兵器であり、近代的な化学兵器は第一次世界大戦で使用された。本格的な化学攻撃は1915年4月にベルギーでドイツ軍が膠着した戦況を打破するために塩素ガスをフランス軍とカナダ軍に対して送り込むことに成功した。戦後にも研究開発が進み、例えばアメリカでは神経ガスVXなどの毒性ガスが発明され、砲弾やミサイルに搭載して運用された。生物兵器とは微生物を用いた兵器であり、近代的な生物兵器にはポツリヌス毒素、ペスト菌オウム病ウイルスなどが利用され、対人用のものには30種類以上の細菌やウイルスが開発されている。核兵器は最も新しい大量破壊兵器であり、核分裂反応または核融合反応の連鎖反応を利用した兵器であり、プルトニウム239またはウラン235を爆縮させて熱エネルギーを得る。第二次世界大戦においてアメリカにより初めて使用され、戦後にはソヴィエト、イギリス、フランス、中国などが保有し、現在でも研究開発が進んでいる。これら大量破壊兵器は化学兵器禁止条約生物兵器禁止条約核不拡散条約などの国際法によって保有、開発、使用などが規制されている。

[編集] 軍事通信

軍の組織化と指揮統率はネットワーク化された通信網に基礎付けられている。軍事通信も基本的には民間通信と同じものだが、戦闘による損害を想定した高度な生存性を要求されるところが大きく異なる。そのために現代では一般的な有線や無線の通信だけでなく、信号煙、伝令、手旗、腕手記号などが併用される。しかしトランジスタ集積回路の開発によって器材が小型化しており、民間の通信技術とともに発展している。収集される情報がレーダー技術や通信衛星を介した無線通信技術の発達により増大したため、情報処理の効率化と高速化が求められている。加えて対抗勢力による傍受や妨害に対する防護、放射能障害からの防護、部隊間や外国軍との通信網の統合、屋外での機動性、非常時のための予備通信など多様な要求にも迫られている。

[編集] 各国の軍事

各国の軍事体制・情勢の概要を記述する。詳細は各国の軍隊の一覧を参照されたい。

[編集] アメリカ合衆国軍

詳細はアメリカ軍を参照

アメリカ合衆国北米大陸を領有し、東西を大洋に挟まれた地理にあり、南方はメキシコ、北方はカナダと隣接している。アメリカ大統領を最高指揮官としてアメリカ合衆国軍が編制されており、核兵器を保有している。建国以来、強大な常備軍を持たない伝統的な軍事思想であり、また孤立的な地理的位置からモンロー主義を採用していた。しかし冷戦期に対ソ封じ込め政策を実施するため、北大西洋条約機構など世界各国と集団安全保障体制を構築し、軍事力が常備化して世界的に部隊を地域的統合作戦部隊に編制して配備している。その主要な国防政策としては、米国本土の防衛、欧州・北東アジア・東アジア沿岸部・中東・南西アジアの重要地域の前方抑止、小規模緊急事態への対処である。軍事力の目標として2地域で同時に作戦を遂行し、うち1地域においては敵を決定的に撃破するものとされている。さらに新たな脅威に対抗するために世界的な米軍再編をも進めている。2001年の同時多発テロ以降には対テロ戦争の国家方針を打ち出してアフガニスタン侵攻イラク戦争を実施した。[11]

[編集] イギリス軍

詳細はイギリス軍を参照

イギリスヨーロッパ大陸イギリス海峡を挟んで位置するグレートブリテン島アイルランド島北部を主に領有し、国王を最高司令官としてイギリス軍が編制されており、核兵器を保有している。イギリス本土や海外領土の防衛だけでなく、軍事外交、より広域な国益の支援、人道支援、同盟国への核抑止の寄与、北大西洋条約機構を通じた集団安全保障体制の貢献やヨーロッパ以外における危機対処などが主要な任務となっている。警察力で対処できない場合はイギリス軍が北アイルランド問題に対処する。軍事力の目標としては、一つの大規模作戦と二つの小規模作戦を同時遂行する程度とされている。第一次世界大戦第二次世界大戦を戦い、現代でも1982年にはフォークランド紛争を戦った。また米軍やNATO軍とボスニア紛争イラク戦争において共同作戦を実施している。[12]

[編集] イタリア

詳細はイタリア軍を参照

イタリアイタリア半島を主に領有する国であり、国防相の指揮下に陸海空軍及び国家憲兵から成るイタリア軍を編制している。国土の三方が地中海に包囲された上に南北に伸長している狭隘な国土であるために海軍力は外洋海軍として重要な役割を担っている。北大西洋条約機構においても地中海地域の重要拠点であるために司令部が設置されている。さらに北大西洋条約機構や国連の軍事作戦に積極的に参加している。[13]

[編集] イスラエル

詳細はイスラエル軍を参照

イスラエルは中東に位置する非常に狭隘な国であり、国防相を最高司令官としてイスラエル国防軍が編制されており、核兵器の保有が疑われている。イスラエルの国防省は首相が文民の国防大臣と副大臣を任命し、その下に総務長官を設置する。イスラエル国防軍は陸海空軍から構成され、軍事作戦では参謀総長が具体的には指揮をとる。準軍事組織に国境警察、沿岸警備隊がある。徴兵制度が採用されており、男女に兵役義務がある。ただしこれはユダヤ人とドルーズ教徒だけに適用される。キリスト教徒やイスラム教徒などは志願できる。兵役義務を終えると予備役として男性は54歳まで、女性は24歳または結婚まで毎年訓練を受ける。また市民警備隊や民間防衛隊の志願で代替することもできる。パレスチナ問題を巡って近隣諸国と対立しており、アラブ諸国との中東戦争を経験している。[14]

[編集] イラン

詳細はイラン・イスラム共和国軍イスラム革命防衛隊をそれぞれ参照

イランは北方のトルクメニスタン、南方のペルシャ湾、東方のアフガニスタン、西方のイラクに包囲された位置にある国であり、最高指導者の下にイラン・イスラム共和国軍イスラム革命防衛隊が編制されている。軍事政権は憲法上で禁止されている。イスラム共和国体制の維持・外国支配の排除とイスラム世界の統一を憲法で国家目標としている。2002年に核開発の問題が顕在化した。[15]

[編集] インド

詳細はインド軍を参照

インドユーラシア大陸の南部に位置しており、国境にはヒマラヤ山脈などの障害地形がある。大統領を最高司令官としてインド軍が編制され、核兵器を保有する。国防の責任者は首相や国防相などを含む内閣に属し、内閣に設けられた政治問題内閣委員会において重要度の高い内政問題や外交問題と併せて決定が下される。ただし非常事態宣言は大統領によって布告され、連邦議会両院に提出を要する。インドの政軍関係は英国の影響を強く受けており、文民統制が徹底されている。現在のインド軍は総司令官を設置せず、陸海空軍の長が国防省に対して責任を持っており、ほとんどのインド独立後の軍人の席次格下げについてもほとんどの軍人は反発していない。兵役は志願兵制であり、独立後はネルー首相の下で経済重視の非同盟政策であったが、中国ともヒマラヤ山脈の領有権を巡って中印国境紛争が起き、敗北を喫した。その後に本格的な軍備の拡張によって今日の軍事力を構築してきた。第三次印パ戦争を契機に南アジアの国際関係において覇権的な地位を獲得するようになった。今でもカシミール地方の帰属を巡って対立している。[16]

[編集] インドネシア

インドネシアスマトラ島ジャワ島カリマンタン島スラウェシ島などを領有する島国であり、大統領を補佐する陸軍大将の指揮下にインドネシア国軍などが編制されている。国家目標は統一共和国の創造、公正かつ繁栄した統一社会の創造、アジアとアフリカの友好親善で世界平和に貢献することにあり、国軍は軍事的な任務と非軍事的な任務を遂行する。近海に出没する海賊対策をも行う。[17]

[編集] オーストラリア

詳細はオーストラリア国防軍を参照

オーストラリアは主にオーストラリア大陸を領有し、国防相の指揮下にオーストラリア国防軍が編制されている。英米と軍事的に密接な関係がある。東南アジア諸国との友好関係と国際秩序の維持を行いながらもホイットラム労働党政権によって自主国防政策が開始された。[18]

[編集] オーストリア

詳細はオーストリア連邦軍を参照

オーストリアはヨーロッパ大陸の中央部を領有し、冷戦期には北大西洋条約機構ワルシャワ条約機構の勢力圏の中間に位置した。大統領を最高指揮官としてオーストリア連邦軍が編制されている。戦後の分割統治下で主権回復のために1955年に永世中立となる。武装永世中立の維持のために総合的国防の思想の下で国力の総動員体制を整えている。[19]

[編集] カナダ

詳細はカナダ軍を参照

カナダ北米大陸の北部を領有し、冷戦期には米国とソ連の中間に位置してきた。首相の指揮下にカナダ軍が統合軍として編制されている。カナダの国防、必要に応じて災害派遣なども任務とする。米国と密接な関係を保って集団安全保障体制を保持する。国連中心主義の政策で平和維持活動にも積極的に参加している。[20]

[編集] スウェーデン

詳細はスウェーデン軍を参照

スウェーデンはスカンディナヴィア半島の主に東半分を領有し、国防相の指揮下にスウェーデン軍が編制されている。17世紀までは優れた軍事力を保有していたが、ナポレオン戦争での敗北を契機に1830年代から中立政策を採用した。しかし第二次世界大戦でその中立は破られている。国家総動員の体制で国土防衛を準備しており、また国連平和維持活動にも積極的に参加している。[21]

[編集] 韓国

詳細は韓国軍を参照

大韓民国朝鮮半島の南部を領有し、大統領が最高指揮官として韓国軍を編制している。国防、平和的な朝鮮半島統一の支援、地域的な安定がその目的とされている大統領を議長として国務総理、外務部長官、国防部長官などが参加する諮問機関である国家安全保障会議があり、大統領府を構成する。韓国の軍事組織は大統領の下に国務総理、国防部長官置かれ、合同参謀本部が国防部長官を補佐する。国防部長官の下には陸海空の参謀総長が統括する本部が置かれ、作戦を指揮する。米韓相互防衛条約の締結、米韓安保協議会の定期開催、米韓連合司令部の設置を以って米韓安全保障体制を準備している。国民は二十歳になると徴兵されるが、海軍は志願制と併用、空軍は志願制である。韓国では北朝鮮の労働赤衛隊に対抗して郷土予備軍が設置されており、民間防衛を担っている。現在でも朝鮮統一問題を抱えており、北朝鮮に対抗するための軍事力を準備している。[22]

[編集] 北朝鮮

詳細は朝鮮人民軍を参照

北朝鮮は朝鮮半島の北部を領有し、国家主席を最高司令官として朝鮮人民軍が編制されている。国防と朝鮮統一の支援を任務としており、先軍政治の方針の下で国家の全面的な軍事化を推進している。軍事制度は不明な点も多いが、国家主席の下に党軍事委員会、共和国国防委員会、政務院人民武力部が設置されており、朝鮮人民軍はその下にある。人事的には国家主席、書記、武力部長の党政治局常務委員によって掌握されており、多元的で複雑な指揮系統である。また準軍事組織として労農赤衛隊や紅い青年近衛隊、人民警備隊がある。兵役は公民の最大の義務であり、憲法では労働年齢を16歳としていることからこれを徴兵年齢と推定できる。[23]

[編集] スイス

詳細はスイス軍を参照

スイスは北方のドイツ、南方のイタリア、東方のオーストリア、西方のフランスに囲まれた内陸国である。平国民の自由と国家の独立を守るために武装中立主義の方針を採っている。時は最高指揮官を持たないが戦時には内閣によって選任され、政治家が軍事目標を定めた上で軍事作戦を遂行する。軍事行政の指導権は常に内閣にある。内閣は合議制の合議機関であり、文民統制が徹底されている。スイス国民は国防意識が高度であり、全ての男性に兵役義務を付与する徴兵制度に基づいた民兵制度を採用している。一部の上級部隊の指揮官を除いて職業的な指揮官、参謀、兵士を持たないために常備軍はなく、海軍も国土が内陸であるために設置されていない。軍令機関が平時では不在であるために、軍事行政機関が比較的広範囲な機能を持っていることが特徴と言える。[24]

[編集] タイ

詳細はタイ王国軍を参照

タイ王国インドシナ半島中央部とマレー半島北部を領有し、国王を最高指揮官としてタイ王国軍などが編制されている。国体護持、独立維持、国土保全を国家目標とし、東南アジア諸国連合加盟国との連携、侵略に対しては米軍の支援を受けて防衛、周辺諸国に対抗可能な軍事力準備、軍需産業の外国依存度低下の取り組みなどが国防政策として行われている。タイでは軍によるクーデターが発生している。(タイ軍事クーデター (2006年)を参照)[25]

[編集] 中国

詳細は中国人民解放軍を参照

中華人民共和国ユーラシア大陸を中央アジア地域から東シナ海までに渡って領有しており、中国共産党軍事委員会の指揮下に中国人民解放軍を編制しており、核兵器を保有している。中華民国との台湾問題などの問題を抱えている。[26]

[編集] ドイツ

詳細はドイツ連邦軍を参照

ドイツはヨーロッパ大陸の中部に位置し、平時は国防相だが戦時には首相を最高指揮官としてドイツ連邦軍が編制されている。ドイツ軍は北大西洋条約機構に参加しており、ヨーロッパ防衛と国土防衛を任務とする。湾岸戦争で人的支援を行わなかったために諸外国から批判を受け、これを契機に侵略戦争を違憲としながらも外国での軍事活動を開始することとなった。

[編集] 日本国

詳細は日本の軍事を参照

日本国は東アジア地域において四方を海洋に囲まれた島国であり、内閣総理大臣を最高指揮官として自衛隊が編制されている。総理大臣の指揮監督下において防衛大臣が自衛隊の隊務を総括し、陸海空の自衛隊がある。内閣には国防についての審議機関として総合安全保障閣僚会議が設置されているが、これは政策決定の権限を持たない諮問機関である。日本国憲法第9条の問題や周辺諸国との外交関係などを考慮して専守防衛の国防方針を策定しているが、日米安全保障条約に基づいてアメリカ軍の駐留を受けれいれており、有事の際には共同作戦を実行できる体制を準備している。志願兵制度であり、特徴的なのは有事においても徴兵制を採用しない見解を政府が示していることである。準軍事組織としては沿岸警備を任務とする海上保安庁があるが、民間防衛組織などは設置されていない。湾岸戦争を契機にして国際貢献のために海外派遣を開始した。[27]

[編集] ブラジル

詳細はブラジル軍を参照

ブラジル連邦共和国南米大陸を中央部から南大西洋に渡って領有しており、大統領を最高司令官としてブラジル軍を編制している。大統領は指揮権、宣戦布告権、陸海空軍の司令官に対する任命権を持っており、国防会議の議長となっている。大統領を補佐する機関として三軍統合参謀本部が設置されており、また軍事作戦を担当する三軍最高司令部がそれぞれに置かれる。政軍関係では比較的軍人の地位は高く、国家のエリート軍人を養成するための特別教育を施す高等軍事研究所が設置されており、軍事学だけでなく政治や経済なども学習する。徴兵制度を採用しており、また国内における犯罪や反政府活動、自然災害などに対処するための民間防衛組織が発達している。米国と相互防衛条約を締結し、リオ条約にも加盟している。[28]

[編集] フランス

詳細はフランス軍を参照

フランスヨーロッパ大陸の西部に位置し、大統領を最高司令官としてフランス軍が編制されており、核兵器を保有している。フランスは元々は北大西洋条約機構の加盟国であり、本部もパリに置かれていた。しかし自主国防の気運が高まり1966年に同盟には留まるとしつつも軍事機構からは脱退した。自国の軍需産業を育成するなど自主国防を重視している。ただし完全に孤立しているわけではなく、政治諸機関の構成員であり、また軍事委員にも代表を出して一定の同盟関係を維持している。[29]

[編集] ロシア

詳細はロシア連邦軍を参照

ロシア連邦ユーラシア大陸の北部をヨーロッパ大陸から北太平洋までの広域を領有している。大統領を最高司令官としてロシア連邦軍などが編制されており、核兵器を保有している。直接侵略の脅威は低下しているものの、北大西洋条約機構の東方進出や国際テロなどの脅威が認められるという認識の下で侵略の抑止や武力紛争の防止、国際安全保障と全面平和の維持を国防の目的と定めている。ロシアは1999年からチェチェン武装勢力とチェチェン紛争で戦って一定の戦果を挙げているが、未だ完全に解決はしていない。[30]

[編集] その他