ローゼンバーグ事件 - Wikipedia

ローゼンバーグ事件

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逮捕されたローゼンバーグ夫妻

ローゼンバーグ事件(ローゼンバーグじけん)とは、ドイツ出身の核科学者のクラウス・フックススパイ容疑で逮捕されたのが発端となって1950年アメリカで発覚した、ソビエト連邦によるスパイ事件。

目次

[編集] 概要

1950年に、アメリカのユダヤ人夫妻ジュリアス・ローゼンバーグ(Julius Rosenberg 1918年5月12日 - 1953年6月19日)とエセル・グリーングラス・ローゼンバーグ(Ethel Greenglass Rosenberg 1915年9月25日 - 1953年6月19日)が、第二次世界大戦中、ロスアラモス原爆工場に勤務していたデイヴィッド・グリーングラス[1]から原爆製造の機密を受け取り、それをソ連に売った容疑でFBI逮捕された。

証拠はグリーングラスの自白のみであり、その上ローゼンバーグ夫妻が無罪を主張したこともあり、これに同情した支援者によって世界的な助命運動[2]が行われた。司法側からは「供述すれば死刑にはしない」との取引誘導もあったが、ローゼンバーグ夫妻は供述を拒否し続け最終的に死刑の判決を受けた。

なお、司法長官室と刑務所間のホットラインが処刑執行まで繋がっており、この状況が刻々と報道されて全世界が注目し興奮に沸いたが、1953年6月19日にローゼンバーグ夫妻は、ニューヨーク州シンシン刑務所にて電気椅子で処刑された。

冷戦が崩壊する1990年代前半までは、この事件は「マッカーシズム反ユダヤ主義を背景にしたでっちあげである」と考えられ、「冷戦下のアメリカにおける人権蹂躙の象徴」として左翼的文化人やマスコミに取り上げられてきたが、1995年に行われた機密解除により、ジュリアスが実際にソ連のスパイであったことが明らかになった。

[編集] 事件後

[編集] 真実

上記のように、長年の間多くの左翼的な研究者やマスコミの間では、この事件はでっち上げであると考えられていた。しかし、1995年に旧ソ連の暗号を解読するベノナ作戦についての機密が解除されたことにより、裁判では明らかにされなかった証拠も明らかになり、夫ジュリアスについては本当にソ連のスパイであったことが判明している[3]。ただし、妻エセルについては名前の言及はあるものの、明確にスパイ活動を行っているという記載はなかった。したがって、エセルには依然冤罪の疑いは残っている。

弟のデイヴィッド・グリーングラスは、自分の妻を庇うために法廷で偽証して姉のエセルの罪を重くしたことを2001年に告白した。また、この事件の担当検事のロイ・コーンは、判事への法廷外での働きかけを駆使し、なかば強引に夫妻の死刑判決を勝ち取ったことを、後に自伝で述べている。

グリーングラスを通してジュリアスがソ連に伝えた情報の質については、より中枢に近い立場にいたフックスと比較するとかなり劣ったものであり、他にも複数いたエージェントの中では際だったものではなかった。ジュリアスがスパイであったことは事実としても、ローゼンバーグ夫妻のみを「象徴」的なものとして強く断罪した判断にはなお論議の余地がある[4]

いずれにしても、ローゼンバーグ夫妻を擁護した数多くの左翼的な文化人たちは、「(ローゼンバーグ夫妻が実際には)ソ連のスパイであった」という点に関しては、ローゼンバーグ夫妻にものの見事にだまされたことになる。司法取引による刑の軽減の持ちかけに対しても、ローゼンバーグ夫妻は『決して口を割らない』というスパイの鉄則を守って処刑されたといえよう。

[編集] フルシチョフ回顧録

一方、ソ連の指導者だったニキータ・フルシチョフが失脚後に書いた回想録の中には、ローゼンバーグ夫妻の名前を挙げて「情報が役に立った」という記述があった。回想記はフルシチョフの死後の1971年にアメリカのタイム・ライフ社により出版されたが、ローゼンバーグ夫妻に言及した部分は、フルシチョフ本人の政治的配慮により回想記からは削除され、この部分が公開されたのは冷戦終結直前の1989年になってからである。

[編集] 一族のその後

長男。経済学教授。娘(夫妻の孫)のアイヴィ・ミアロポール映画監督2004年、ローゼンバーグ事件を扱ったドキュメンタリー映画「Heir to an Execution」をサンダンス映画祭に出品し話題となった。
次男。弁護士となる。のち、獄に繋がれた左翼活動家の子供たちのためにローゼンバーグ児童基金を設立。

[編集] 著書

夫妻が獄中から幼い2人の息子たちに送った書簡は『愛は死をこえて[5]』の題名で邦訳され、ベストセラーとなった。

[編集] 脚注

  1. ^ エセルの実弟で、当時ソ連のスパイだった
  2. ^ 助命嘆願者の中にアインシュタインオッペンハイマーサルトルもいた
  3. ^ ただし、en:Venona_project#Julius_and_Ethel_Rosenbergによれば、ジュリアスがソ連に渡していた主な情報は、原爆に関するものではなく、近接信管ロッキードF-80 (戦闘機)エマーソン社に関するものであったとされる。
  4. ^ NSAのベノナ作戦のページにある年表には、ベノナで特定されたというローゼンバーグ夫妻を含むKGBエージェントの名前が多数挙げられているが、その中で逮捕、処刑が確認されているのはこのローゼンバーグ夫妻のみである。ベノナ#年表参照。
  5. ^ 山田晃訳『愛は死をこえて―ローゼンバーグの手紙』光文社、1953年

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ


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